中央日報日本語版

ところがオーストラリアはドナルド・トランプ政府時期の米国が自国優先主義で直進する時はこれを批判すると同時に備えもした。オーストラリアは米国や中国など強大国が自国国益のために一方的に国際規範を無視する行為に及べば、これを批判して「規範に即した国際秩序」を守っていくために声を高めてきた。今の国際秩序で平和と繁栄を享受してきたオーストラリアは現状を変更しようとする勢力の狙いを遮断することが国益に符合すると考えるためだ。

そしてオーストラリアはこのような国際秩序を維持していく努力を一人でするよりは他の中堅国と連携するほうが望ましいと考えた。そのため力を合わせる対象国として、日本・インド・韓国・インドネシア4カ国を2017年外交白書に摘示した。その後、韓国との協力が期待に沿えなかったためかオーストラリアはベトナムを戦略的協力対象国に追加して関係を強化している。オーストラリアとベトナムは2013年習近平国家主席就任以降、中国が攻勢的対外政策を展開すると警戒心を高めて、中国からもたらされる危険を減らすために「カウンターバランシング(Counter-balancing、釣り合いを取る)政策」で対応している。

オーストラリアは先進国のうちで中国に対する経済依存度が最も高い。このため中国は西側諸国のうちオーストラリアを一番の弱点だと考えてしばらく多角的に力を入れていた。しかし最近のオーストラリアの反中国的外交は中国の目には棘と見なすほかなくなった。このためオーストラリアに対する中国の経済報復は予想された手順だった。昨年から中国は石炭・牛肉・ワインなどの輸入を制限して関連分野のオーストラリア産業界が大きな被害を受けている。

しかし逆説的に国際鉄鉱石価格が急騰したことに伴いオーストラリアの対中輸出総額はむしろ増えた。そのうえ石炭不足により深刻な電力難を強いられている中国は最近オーストラリア産石炭輸入の再開を結局許容した。中国が自分の足の甲を自ら踏んだ格好になった。幸いオーストラリアは中国が必要とする原材料を保有して中国の圧力に耐える余裕があったことになる。

このような状況の中でオーストラリアは最近、米英とオーカス同盟を締結することによって中国にさらなる一撃を加えた。第2次世界大戦以降、米国中心主義の時代に米国は「ハブ・アンド・スポーク体制(Hub & Spokes System)」という二国間同盟を構築してきたが、オーカス同盟は過去にはあまり見られなかった3国同盟体制なので目を引く。外交史を振り返ってみると3国同盟が登場する時点には国際情勢が不安で戦争の影がちらついていたことから、そのような側面で懸念が先立つ。そしてこの同盟に参加した3国はすべてアングロサクソン国家であり海洋国家だ。アイデンティティがほぼ同じ3カ国が一つになるということは本当に信頼性のある国だけで手を握る流れが優勢なことを予告する。

オーカス同盟が締結される過程でフランス外務省長官は「3国が背中に短刀をさした」という表現を動員するほど交渉が秘密裏に進行された。過去、国際情勢が大きく揺れ動いたときにこのような秘密外交が横行したが、オーカスを契機に今後このような秘密外交が加速するのではないかという不吉な予感がよぎる。また、国家関係において規範と信義が重要視されなくなる冷酷な現実主義時代が近づいているという事実をこの同盟の出現は示唆している。

オーカス同盟の発足でフランスは約74兆ウォン(約7兆1500億円)に達する潜水艦事業から手を切らなければならない状況だ。オーストラリアとの契約を信じていたフランスは大きな不覚を取ったといえる。米国も核不拡散を不可侵の原則のように掲げていたのに自国利益の前に軽々と捨て去った。国益のためには新たな同盟に果敢に参加して既存の友好国との信義も破る冷厳な現実主義路線をオーストラリアが選んだといえる。

「政治の難しさは自分が見たくないところを絶えず見続けることにある」とフランス政治思想家ピエール・マナン(Pierre Manent)は説明した。自分が見たいものだけを見てそのように実現していくことを期待するのは国際情勢の大転換時期においては純真というよりは危険だ。現実を直視して他の国の動向を注視してこそ自分たちが進んでいく道を切り開いていくことができる。

イ・ベクスン/国防大学招へい教授、元オーストラリア大使

 

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