中日スポーツ

 米国で感染症の権威として知られる、ミネソタ大学感染症研究・政策センターのマイケル・オスターホルム所長(68)が27日、「東京五輪は中止することが最も安全な対策だろう。緊急の行動を求める」と提唱した。その理由として「IOC(国際オリンピック委員会)の感染対策は科学的根拠を欠く」と具体例を挙げた。

オスターホルム所長はジョー・バイデン米国大統領への政権移行時、新型コロナウイルスの感染対策のアドバイザーに指名された研究者。米CNNの取材に対し、「2020年3月に東京五輪の延期が決まったあと、日本では爆発的な感染が抑制され、ワクチン接種が進むと期待されていた。しかし、そうはならず緊急事態宣言下にある。いま日本では変異種が流行し、ワクチン接種率は5%にすぎない。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も低い水準」と感染リスクが高い国であることを解説した。

さらに「五輪選手全員分のワクチンは提供される見込みだが、100カ国以上でワクチンは未承認で、入手方法もあいまい。五輪選手全員が大会前にワクチン接種を受けられる保証はない。とくに18歳以下の選手は接種できない国も多い。その結果、十代の選手が五輪中に感染し、200以上の国に帰国して感染を拡大させるリスクがある」と指摘した。

またIOCが発表した「プレイブック」と呼ばれる感染症対策の指針は「米国の各プロスポーツで行われ、成功した、厳格な感染症対策や経験が反映されておらず、科学的な根拠を欠く」と断言。「屋外競技より屋内競技のほうが感染リスクは高い。リスクレベルよって安全対策は異なる」と画一的な指針の不備を指摘した。

続けて「選手村など宿泊は相部屋が基本だが、コロナ禍以前に設計されており、換気システムは不十分で感染リスクは高い」とした。

また「IOCは全選手に接触履歴を記録し、健康状態を報告するアプリが入ったスマホを支給する予定だが、接触追跡アプリは効果がないことが多い。またほとんどの選手はスマホを持って競技しない。ウエアラブルデバイスの方が効果的だ」と提案した。

最後にオスターホルム所長は「緊急にWHO(世界保健機関)が私たちのような専門家と、選手の代表を招集し、東京五輪でのリスク管理について話し合い、助言することを求める。もし五輪を開催するなら、緊急に行動するべきだ」と強調。IOC任せの脆弱(ぜいじゃく)なコロナ感染対策に危機感を示した。

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